『あかいみはじけた』











 

 

「何やってるんだ、お前?」

 

 孤児院には苺が植えてあった。

 痩せた土地の所為なのか、食用加工されていないのか、小さくて硬い実が生る。

 食べられない事はないがとても酸っぱい。

だから園長がジャムを作る時以外、見向きもされないものだった。

 

「え・・・えっと・・・えっと・・・」

 

 アキラの方から、自分に話しかけてくれた。

 その珍しい事実に嬉しくなった。

 つまみ食いをしていた後ろめたさも、お腹が空いて耐えられない苦しさも、何もかもが吹き飛んだ。

 

「あの・・・お腹、空いて・・・」

 

 ふぅん、と、それを咎めるでも無く、アキラはケイスケの隣にちょこんと腰を下ろした。

 

「やめとけ。ここのは酸っぱいぞ?」

「アキラ、食べた事あるの?」

「・・・・・・内緒だからな」

 

 アキラがそう言うなら、絶対、誰にも言わないよ。

 彼とちょっとした秘密を共有できて、ケイスケは少しどきどきする。

 

「あ、でも、コレ、甘いんだよ?」

 

 黒くなっている苺を差し出す。

 アキラは訝しげにそれを見る。

 

「そんなの食えないだろ?」

「平気。ちょっと勇気いるけど、甘いんだ」

 

 こんな腐りかけの苺、本来ならば誰も見向きはしないだろう。

アキラも恐る恐る1つ摘む。

 傷んだ果実は事の外、甘かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舌の上に残る赤が。

 甘くて、甘くて。甘くて。







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((サンクスうねたん ウィズらぶ))