枝が揺れ、木の葉が落ち、守られていた熟れた実がのぞく。
平穏とは何ものにも揺るがない気持ちを持つことだと思う。
穏やかでいるだけではない。
依存も執着も全てがゼロであること。
つまりは自らを乱すものは人でもものでも遠ざけるべきで。
そうして遠ざけ、自らを本当の平穏へと導くのだ。
誰も入っては来られないところに押し込めて。
どうしても見えないところで輝く光に目隠しをして。
平穏はつくられた。
見える場所にあるのはソファの肘掛に伸びる自らの腕だけ。
輝く銀の髪。
目に宿る飢えた光。
言葉にちりばめられた嘘のようなまたたき。
平穏を大きく揺さぶるその光に目がくらむ。
隠されない光はあんなにも美しいものなのか、頭が理解を拒んだ。
理解は平穏を崩してしまうから。
求めていたことを、忘れていたことを。
蘇らせては苦しめるから。
差し伸べる手を振り払うのは、こんなにも苦しいことだったか。
ひとことの同意が、こんなにも喉につかえるのか。
ほどきかたを忘れた結び目を。
ぷつりと切らずにほどけると言って。
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熟れた実がひとつぶ、輝くしずくを。